相続全般でよくいただくご質問をいくつかピックアップしました。
被相続人の自筆の遺言書(自筆証書遺言)があればすぐに相続登記できますか?
自筆証書遺言で相続登記をすることはできますが、公正証書遺言以外の遺言はすべて家庭裁判所で検認を受ける必要があり、検認のない自筆証書遺言を相続登記申請で添付しても登記は受理されません。遺言書の検認は、亡くなった遺言者の最後の住所地の管轄家庭裁判所に申し立てて行いますが、東京家庭裁判所の場合、検認を申し立ててから検認期日に検認をするまで、1ヶ月程度かかるようです。
自筆証書遺言・公正証書遺言のメリット・デメリットを教えて下さい。
- 自筆証書遺言のメリット
- 遺言者が、いつでも自由にすることができる
- 費用がかからない
- 内容を他人に知られない
- 自筆証書遺言のデメリット
- 方式の不備で無効又は一部無効になる可能性がある
- 家庭裁判所での検認手続が必要になる(遺言者死亡後)
- 破棄されたり、隠匿や改ざんの恐れも多く、場合によっては、遺言が発見されないこともある
- 公正証書遺言のメリット
- 方式の不備で遺言が無効になるおそれがほとんどない
- 家庭裁判所での検認手続を経る必要がないので、相続開始後速やかに遺言の内容を実現することができる。
- 原本が必ず公証役場に保管されるので、遺言書が破棄されたり、隠匿や改ざんをされたりする心配もなく、より安全に保管することができる。
- 公正証書遺言のデメリット
- 公証役場に行く時間や、費用がかかる
相続人のうちの1人が行方不明なのですが、遺産分割協議をするにはどうしたらいいでしょうか?
行方不明の相続人のために「不在者財産管理人」を選任(家庭裁判所へ申立)して、不在者財産管理人が家庭裁判所の許可を得て遺産分割協議を行います。遺産分割協議は相続人全員で行う必要があり、相続人の中に行方不明者がいるからといって残りの相続人だけで遺産分割協議をしても有効なものではありません。
相続人の中に認知症の人がいるのですが、遺産分割協議はできますか?
認知症等で判断能力に問題がある人がいる場合、その人のために成年後見人又は保佐人、補助人を選任(家庭裁判所へ申立)して遺産分割協議をすることが必要になる場合があります。
相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割協議は、どうすればいいのですか?
未成年の子の親も相続人となる場合や、相続人に未成年の子が数人いる場合は、特別代理人を選任(家庭裁判所へ申立)して遺産分割協議をする必要があります。
相続人になるのは誰ですか?また、各相続人の相続割合はどのように決まりますか?
被相続人の親族の構成によりますが、大きく分けると次のようになります。
- 配偶者と子がいる場合
- 配偶者(1/2)と子(1/2を子の人数で均分 )
- 配偶者と親がいる場合
- 配偶者(2/3)と親(1/3を親の人数で均分)
- 配偶者と兄弟姉妹がいる場合
- 配偶者(3/4)と兄弟姉妹(1/4を兄弟姉妹の数で均分)
- 配偶者しかいない場合
- 配偶者が全部相続
- 子しかいない場合
- 子が全部相続(子の人数で均分 )
- 兄弟姉妹しかいない場合
- 兄弟姉妹が全部相続(兄弟姉妹の人数で均分 ) なお、相続人となるべき子又は兄弟姉妹が先に亡くなってしまっている場合は、その子又は兄弟姉妹の子が相続人(代襲相続人)となります。 子の代襲相続人になるべき人も亡くなってしまっている場合は、更にその子が代襲相続人となります(再代襲)が、兄弟姉妹の代襲相続人になるべき人が亡くなっている場合は、その子が代襲相続人となることはありません。
権利証(登記識別情報)を紛失してしまったのですが、相続登記をすることが出来るのでしょうか。
相続登記の場合は、権利証がなくても登記が可能です。(遺贈による登記は除く)
相続登記したあとに紛失した場合は、権利証の再発行はいかなる場合も認められていないので、不動産を売却等する場合には、司法書士がこれに代わる書類(本人確認情報)を作成することになります。
登記を依頼する不動産が遠方にありますが依頼できますか?
当事務所はオンライン申請に対応しておりますので、全国どこでも大丈夫です。
相続登記は、すぐにしなければいけないものなのですか?また、しないとどうなるのですか?
不動産の権利の登記をすることは、法律上義務付けられているわけではありません。ですから、相続があった場合に相続登記をしないまま放っておいても、法律上罰せられることはありません。ただし、相続登記をしないで放置した場合、相続人がその後に亡くなる事態が生じると、相続関係が複雑になり、遺産分割が困難になったり、必要書類も多くなったりと手間がかかる可能性が高くなります。ですから、なるべく早い段階で相続登記をすることをお勧め致します。
相続した不動産を売却したら税金はかかるのでしょうか。
土地や建物を売ったときの譲渡所得に対する税金は、事業所得や給与所得などの所得と分離(分離課税)して、計算することになっています。
計算方法は、下記の通りです。
計算方法は、下記の通りです。
- 譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引いて計算します。
-
【1】取得費とは
取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費を加えた合計額をいいます。
なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。
相続の場合は、昔のことで、取得費が分からないこともよくあります。 -
【2】譲渡費用とは
譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、 建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。 - 長期譲渡所得と短期の区別
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土地や建物を売ったときの譲渡所得は、次のとおり所有期間によって長期譲渡所得と短期譲渡所得の二つに区分し、税金の計算も別々に行います。
長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。
「所有期間」とは、土地や建物の取得の日から引き続き所有していた期間をいいます。
相続の場合、原則として、亡くなった方の取得した日から計算することになっています。
相続した不動産を売却して損失が生じても税金はかかるのでしょうか。
個人が、土地又は建物を譲渡して長期譲渡所得又は短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、
その損失の金額を他の土地又は建物の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、
事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。
なお、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合に限り、 譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、 その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
なお、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合に限り、 譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、 その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える土地や建物を売ったときの税額の計算は、どのようになりますか?(長期譲渡所得)
以下の計算になります。
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 (注)
平成16年1月1日以後に譲渡した場合の税額の計算は次のように行います。
税額=課税長期譲渡所得金額×(所得税15%)(住民税5%) (注) 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
【具体例】
30年前に購入した土地、建物の譲渡価額が1億5,000万円、土地・建物の取得費が1億円、譲渡費用(仲介手数料など)が500万円の場合
課税長期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 (注)
- 譲渡価額とは、土地や建物の売却代金などをいいます。
-
取得費とは、売った土地や建物を買い入れたときの購入代金や、購入手数料などの資産の取得に要した金額に、その後支出した改良費、設備費などの額を加えた合計額をいいます。
なお、建物の取得費は、所有期間中の減価償却費相当額を差し引いて計算します。
また、土地や建物の取得費が分からなかったり、実際の取得費が譲渡価額の5%よりも少ないときは、譲渡価額の5%を取得費(概算取得費)とすることができます。 - 譲渡費用とは、土地や建物を売るために支出した費用をいい、仲介手数料、測量費、売買契約書の印紙代、売却するときに借家人などに支払った立退料、建物を取り壊して土地を売るときの取壊し費用などです。
- 特別控除は、通常の場合ありませんが、マイホームを売った場合の3,000万円の特別控除など各種の特例があります。
平成16年1月1日以後に譲渡した場合の税額の計算は次のように行います。
税額=課税長期譲渡所得金額×(所得税15%)(住民税5%) (注) 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
【具体例】
30年前に購入した土地、建物の譲渡価額が1億5,000万円、土地・建物の取得費が1億円、譲渡費用(仲介手数料など)が500万円の場合
- 課税長期譲渡所得金額の計算
- 1億5,000万円-(1億円+500万円)=4,500万円
- 税額の計算
-
イ 所得税
4,500万円×15%=675万円
ロ 復興特別所得税
675万円×2.1%=14万1,750円
ハ 住民税
4,500万円×5%=225万円
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年以下の土地や建物を売ったときの税額の計算は、どのようになりますか?(短期譲渡所得)
以下の計算になります。
課税短期譲渡所得金額の計算
課税短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 税額=課税短期譲渡所得金額×(所得税30%)(住民税9%) (注) 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
【具体例】
課税短期譲渡所得金額が800万円の場合
課税短期譲渡所得金額の計算
課税短期譲渡所得金額=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除 税額=課税短期譲渡所得金額×(所得税30%)(住民税9%) (注) 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付することになります。
【具体例】
課税短期譲渡所得金額が800万円の場合
- 所得税
- 800万円×30%=240万円
- 復興特別所得税
- 240万円×2.1%=5万400円
- 住民税
- 800万円×9%=72万円